リアル店舗の強み再考へ!ネットショップとの連携事例もご紹介
2020年の新型コロナウイルス感染症の世界的拡大を発端に、ネットの利用者数は増加したと言われています。非接触や外出自粛等の状況下で、予てより成長していたネットショップは改めて注目されることとなりました。同時にリアル店舗の今後についても、その存在価値を問われるようになったのです。そして今、ネットショップに力を入れるのと同時に、あえてリアル店舗を出店する企業が出てきています。コロナ禍によって変わってしまった消費者の生活様式に対して、リアル店舗でしか提供できない価値とは何か。この記事はこれからリアル店舗の出店を考えている方に向けて、リアル店舗とネットショップの違い、リアル店舗のメリット・デメリット、ショールーミングストアという店舗形態についてお伝えしていきます。
1.リアル店舗を取り巻く市場について
(1)ネットショップの市場規模
経済産業省『令和3年電子商取引に関する市場調査』によると、令和3年物販系分野のBtoC-EC市場規模は、13兆2,865億円となっています(前年12兆2,333億円)。徐々に外出機会が回復している中でも前年比8.61%増、EC化率8.78%という数値は、ECの利用が消費者の間で定着しつつある証拠であるとされています。また物販系分野の市場規模の内訳として、「食品、飲料、酒類」、「生活家電・AV機器・PC・周辺機器等」、「衣類・服飾雑貨等」、「生活雑貨、家具、インテリア」の割合は大きく、物販系分野の73%を占めています。この分野の市場規模は外出機会が回復する今後も更に成長すると考えられており、早急にリアル店舗の差別化が必要になってくる分野と言えるでしょう。
(2)消費者がリアル店舗で購入する理由
ネットショップが消費者に定着しつつあることは明確になりました。とはいえ、EC化率の数値から見ても、リアル店舗での売上がまだまだ大半を占めています。株式会社ネオマーケティング『リアル店舗とオンラインショップ、どう選ぶ?』によると、「衣服・ファッション小物」、「食品・飲料・酒類」、「家電・TV・カメラ」、「美容・化粧品」の分野における実店舗で購入する理由は、いずれも「商品を生で見て決めたいから」が最多となっています。また、「陳列棚にある商品全体を見たいから」が20%強いるなど、消費者がリアル店舗に求めることは、実物を直に体感することだとわかります。この部分に関しては、ネットショップでの訴求は難しいと言えます。
(3)注目のリアル店舗をご紹介
リアル店舗に消費者が求めていることは、ネットショップでの訴求が難しいことがわかりました。「商品を生で見て決めたい」、「陳列棚にある商品全体を見たい」という実物ありきの顧客体験をいかに昇華していくか、リアル店舗の存在価値はここにあると考えられます。さて、最近リアル店舗とネットショップの強みをそれぞれ補完し合う事例が出てきました。
①JRE MALL Cafe
『JRE MALL Cafe』は2021年11月、横浜駅にオープンした体験型ショールーム店舗です。元々2018年3月より運営していた『JRE MALL』というネットショップは、鉄道関連グッズや地産品の購入、ふるさと納税を取り扱うなどでメディアにも取り上げられるほど注目を集めています。『JRE MALL Cafe』はふるさと納税の返礼品等を、「見て・触れて・味わう」ことを訴求価値としています。大画面モニターを用いた生産者との体験型ワークショップや、QRコードによる『JRE MALL』での購入も可能です。また地産品を使用したメニューが味わえるカフェを併設することで、乗降客の多い横浜駅において待ち時間でも利用できる工夫がなされています。『JRE MALL Café(リアル)』の来店者を『JRE MALL(ネット)』に誘導する役割を担っており、互いに補完しあうような仕組みとなっています。
参考:JRE MALL Café
https://www.jreastmall.com/shop/e/ejrecafe/
②Meetz STORE
『Meetz STORE』は2022年4月、新宿高島屋にオープンしたショールーミングストアです。リアル店舗での購入はできず、専用のECサイトから購入可能です。外部キュレーターと社内のバイヤーが厳選したブランドアイテムを、専属の販売スタッフが丁寧に提案することで、来店者とアイテムの新たな出会いを創出します。また、コンセプトを“想いを結ぶギフトプラットフォーム“としており、住所を知らない相手にもギフトを送れる「ソーシャルギフト」サービスも用意されています。こちらもアイテムのQRコードを読み取ることで詳細情報の取得や購入がスムーズにできる仕組みとなっています。また、購入時の決済に高島屋のデビッドカード又はクレジットカードを利用することで、外部加盟店利用時のポイント率が適用されるなど、高島屋でのショッピングを更に楽しくお得にする工夫も見られます。
参考:Meetz STORE
https://meetz.store/
③amazon Style
『amazon Style』は2022年5月、米国カリフォルニア州にオープンした体験型リアル店舗です。主な取扱商品はメンズ・レディース向けのアパレル、アクセサリー、シューズとなります。リアル店舗でのショッピングとテクノロジーを融合した体験を売りにしているようで、「amazon Shopping」アプリを利用することで、顧客のパーソナリティに合わせたショッピングが可能になります。こちらでもQRコードを用いての詳細確認・購入は言わずもがな、多くのアイテムをスキャンして好みを絞っていくと、好みに合わせたお買い得なアイテムをアプリが提案してくれます。更に、試着室にはアイテムが自動で送られてくるなど、リアル店舗でしかできない「実物を見て選ぶ」「試着」という流れを、更にスマートに行うことが出来るようです。
参考:amazon style
https://www.amazon.com/b?ie=UTF8&node=23676409011
2.リアル店舗とネットショップの違い
「商品を生で見て決めたい」、「陳列棚にある商品全体を見たい」というニーズに対し、アプリやQRコード、モニター類を活用することで、ネットショップの詳細な情報を取得できたり商品の購入・配送をお得にスマートにできたり等、リアル店舗を補完するようにネットショップの強みを融合させています。このようなネリアル店舗とネットショップを融合させるマーケティングを「OMO」と呼びます。但し、「OMO」を考えるには、まずリアルとネットの強み・弱みは何かを把握することが重要です。ここで基本に立ち返り両者の違いを確認していきましょう。
OMOについては、『店舗集客~オンラインとオフラインの融合~』でもご紹介しています。
(1)時間と場所
コロナ禍における巣ごもり消費時、両者の集客数に大きく影響を与えた要素です。リアル店舗は基本的に営業時間が設定されており、立地によって来店可能な客数も限られてしまいます。対してネットショップはアクセスできるデバイス・環境さえあれば、誰でも24時間どこからでも来店可能です。こうした物理的な面で見込める集客数に大きな差が生じます。
(2)開業費用
近年の出店事情において、リアル店舗かネットショップかを決める際に比重の重い要素です。リアル店舗は物件取得費、家賃や内装・設備工事費、人件費・水道光熱費などが発生します。日本政策金融公庫『2021年度新規開業実態調査』によると、開業費用の平均値は941万となっています。対するネットショップはサイト構築費やネット回線、パソコン・プリンタや撮影機材、ファックス・固定電話、仕入金・配送費、人件費・広告宣伝費など項目は多いですが、最低10~20万でも開業が可能なようです。ネットショップの規模や目的によって開業費用は大きく異なりますが、「BASE」等の既存サービス利用による費用削減方法もあり、リアル店舗とネットショップの開業費用には大幅に差が生じています。
出典:日本政策金融公庫『2021年新規開業実態調査』
https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kaigyo_211129_1.pdf
(3)商品・アイテムの品揃え
ニーズが多様化している昨今、売上高に大きく影響を与える要素です。リアル店舗は面積や内装制限の関係で、ディスプレイを工夫したとしても商品・アイテム数には限りがあります。その代り定番・人気・お買い得商品が明確です。対するネットショップの場合、商品アイテム数はサーバーの容量次第です。消費者のニーズに合った商品を拡充していけば、それだけ購入される確率も上がります。商品・アイテム数に大きな差があります。
(4)接客
販売側と消費者双方にとって商品の売買を後押しする人的要素です。リアル店舗では常駐スタッフと消費者の双方向のコミュニケーションによって、多様なニーズに対して臨機応変な対応が期待できます。対するネットショップは、商品ページやヘルプ、お問合せやチャットがその役割を担っています。基本的にネットは情報の網羅性に強みを持つため、利用者が増加していくと臨機応変な対応は難しくなるなど、提案の柔軟性に差があります。
(5)商品情報
販売側と消費者双方にとって商品の購入を後押しする物的要素です。リアル店舗は本物を直接触れる・見られる・試せることが最大の特徴です。対するネットショップは文字・画像・音声の組合せによる多彩な情報が魅力です。前述した接客だけでなく店舗デザインやサイトデザインなどの関連部分の情報も併せて考えると、そもそも提供できる情報の質に差があります。
3.リアル店舗のメリット・デメリット
ざっくりとした説明ですが両者の違いから強み・弱みが見えてきたかと思います。実際は販売商品によって許容できる範囲は異なりますが、今後リアル店舗を出店する場合はこの違いを把握しておくことが重要です。そのうえで、運営側から見たリアル店舗のメリット・デメリットを考えてみたいと思います。
(1)メリット:対面でのコミュニケーション
前述しましたが、顧客に対して丁寧に・柔軟に対応できる点が最大の強みです。コミュニケーションを通して、顧客ごとに異なるニーズを感じ取り、商品の価値を多彩なアプローチで訴求することができます。関係性を構築できれば、リピート率の向上も見込めます。
(2)メリット:「体験」という価値訴求
リアル店舗は商品だけでなく、商品を熟知している販売スタッフやブランドを表現した内装デザインなど、ショッピングを楽しむための雰囲気・環境が魅力的です。商品に満足し、接客に満足し、ショッピング自体に満足してもらうことで、ブランドのファンを生み出すことができます。
(3)デメリット:出店費用が高め
前述した開業費用に加え、維持するための費用もネットショップに比べて高くなります。ネットショップからリアル店舗にも出店する場合、資金調達の方法は大きな課題となります。また、リアル店舗は出店地が売上に大きな影響を与えるため、場合によっては利益が出ないという危険性も十分にあり得ます。
(4)デメリット:集客数の限界
ネットショップと違い誰でも24時間どこからでも来店できないのがリアル店舗です。つまり、ネットと比較すると集客数にはどうしても限界があります。更に、出店地・商圏設定等を誤ると商品・スタッフ・環境が魅力的でも顧客は来店してくれません。事例のような立地の工夫がないと、そもそもネットショップとの融合自体が成り立たなくなってしまいます。
4.これからのリアル店舗のあり方
リアル店舗とネットショップの違い、メリットとデメリットを確認したことで、冒頭の事例がリアル店舗でどのような価値を提供しているか、ある程度わかってきたかと思います。冒頭の事例は「OMO」をベースに、リアル店舗のメリットを活かした「ショールーミングストア」という店舗形態です。実験的に展開する企業が増えており、今後更に注目されると予想できるため、リアル店舗の出店を検討されている方は一考の価値ありです。
(1)ショールーミングストア
元々消費者がリアルで商品を確認した後に、ネットで購入することを「ショールーミング」と呼びます。ネットの方が安い場合やポイントが付くなどの理由で、売り上げが他社のネットショップに流れてしまうという事態を引き起こすため問題視されています。「ショールーミングストア」とは、企業が意図的に上記の消費行動を自社のチャネルで促す店舗形態です。リアルとネットを融合させることで、リアルでの商品確認とネットでの購入を統合されたサービスで訴求できるうえ、利便性やお得感などで顧客体験を更に向上させると言われています。
実際どのように「対面でのコミュニケーション」や「体験という価値訴求」を実現していくか、そのアイデアを内装デザインに落とし込んだ資料として『TAISHO design activity~ECサイトからリアル店舗への展開~』を準備しております。
5.まとめ
リアル店舗でしか提供できない価値とは何か。実例を元に「ショールーミングストア」という店舗形態をご紹介いたしました。これまでのリアル店舗とは異なり、今後は実物を見て楽しむ場としてネットショップと共存していく必要があるでしょう。当社はブランドや店舗コンセプトをもとにした内装デザイン、出店の係る調査や工事などもお手伝いしております。お困りの際はお気軽お問い合わせください。
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