進化する空間デザイン：次世代型店舗が拓く新しい時代

コロナにより、期せずして訪れたパラダイムシフトのなかで、「音を、楽器を楽しみたい！」。
その「音楽・楽器の力」がコロナをブレークスルーしていく“力”となり、その“力”が既成楽器店の枠に収まらない新しい体験を提供するエンターテイメント空間を創造し、リアルとデジタルの環境融合ショップを生み出しました。

それが誰もが“音”によって、「楽しさ」・「安らぎ」・「繋がり」を共感できる多様性のある音楽ストアです。
各売場がエンターテイメント性を持ち、楽器がアート作品のように見える環境を体感できる新たな空間にリニューアルしました。
「芸術の秋」、「ハロウィン」等の“with コロナ商戦”・“after コロナ商戦”も見据え、「ミュージアム」、「木漏れ日が降り注ぐ森」、「屋外サーカス」、「UI・UXミックス」等の特性をもった環境づくり（内装・ディスプレイ）によるエンターテイメントな発信型ストアにチャレンジした店舗なのです。
その内容を少しだけご紹介いたします。

1.テーマ性のある売場

アコースティックギター売場のテーマは「自然・森」です。
植栽をベースにリアルな「自然・森」づくりは、虫や湿気が付きもの。それらは楽器にとっては大敵です。残念ながら楽器環境には“NG”なのです。
だったら少しでもテーマの実現に向けて、防虫処理された樹木の生木を使用し、”より自然に近い”形を表現し、葉の部分はフェイクでも触ってリアル感のある「トネリコ」・「ベンジャミン」などを使用したところ、照明ライトの光が森の木漏れ日を感じさせる、そんな空間となりました。
まさに「自然・森」の中にあるアコースティックギターの画は「自然」そのものです。
そして電子ピアノコーナーではサブテーマである「優雅さ」と女性ユーザーの嗜好に合わせ、アロマディフューザーを設置しました。
これらの“環境づくり”により、この「自然・森」のなかに人間の感覚全体を指す「五感」のうち「聴覚」、「視覚」、「触覚」、「嗅覚」を体験することができる空間を生み出したのです。

2.楽器の“魅せ方”

既存の楽器の“魅せ方”を刷新したのがドラムシンバルコーナーです。
円形・放射状に配置すると迫力のあるアート作品へと様変わり、天井部に仕込んだ鏡面ステンレスからは、まるで”シンバルの万華鏡”の空間となりました。
この空間のファクターは金物造作の精度とその止め方など、高度な職人の技であり、それらが求められる作業ということになります。
この世界観をつくり出すためにはそれらの「作業」の集積が不可欠であり、腕の見せ所となります。それによりテーマ性のある売場ができあがり、その空間に感動したYouTuber ミュージシャンの方からの「これ（世界観）を作った人やデザイナーに会ってみたい！」という感動のコメントにも、その“価値”が集約されています。

3.試奏室の防音・吸音性能

演奏には欠かせないスタジオ性能は、防音と吸音のセンシティブなバランスが求められます。
これを解決するには売場担当者の方との協議に長い時間を費やしました。他店舗スタジオの防音性能測定による※デシベル値・Nｃ値（騒音評価値）・TDL値（遮音性能）等を検証し、試奏室、スタジオ、防音室に求められる性能をもつ「防音建具（防音ドア）」を提案し、必須測定値を守り、また「防音床（浮き床： コンクリートスラブなどの床構造体と床材とを離し、その間に防振材を挟み込むことで、床の音が直接構造体に伝わることを防ぐ）」レベルも考慮して施工しました。
実際に演奏デモを何度も繰り返し、環境やデザインにも配慮した素材を選定し、調整していくことに重点を置きました。

※について詳しい説明を掲載希望の方は下記「お問い合わせ」からご連絡ください。

4.ライブスタジオ

コロナ禍による「引きこもり需要」、「リモートセッション」など業界のパラダイムシフト商戦における次世代ストアの目玉としてライブコマースによる臨場感のある空間に拘り、ライブスタジオをリニューアルしました。
その空間は映像配信が主な目的のため、色々な楽器やそれに沿う様々な背景と「映（ば）える」フォトジェニックなアトモスフィア（雰囲気、環境）が求められ、その障害となる音響機器（スピーカー、各楽器付随する電子機器）などの設置場所（演奏者オペレーションテリトリー）のレイアウトには苦慮しました。
そして一番の問題はミュージシャンの演奏時の微妙な設備音（換気・空調・ファンノイズ）、音の響きが我々には気が付かないことです。気にならない雑音、音の反響などの問題を解決するため、各設備業者、音響設備業者との度重なる協議を重ね、数値測定を何度も繰り返し、なんとか満足できる音響空間に到達しました。

「環境融合」的案件や「音響空間」にご興味がある方は一度大昌工芸にご連絡下さい。