お得に移転!節約できる費用の削減方法やコツ
2020年より広まったコロナ禍を機に店舗のあり方は年々変化しています。飲食店の例では、テイクアウト専門店への業態転換や住宅地近辺への出店増加など、多くの企業が生活様式の変化に合わせて新しい取り組みを始めました。いずれも現状より業績を向上させるという目的がありますが、環境を変えるとなるとそれなりに費用が発生します。現在、移転をお考えの方も費用について悩まれているのではないでしょうか。この記事では、移転にかかる費用の中でも金額の大きい工事費用について、節約方法と注意点をご紹介します。
1.移転にかかる費用とは?
店舗移転の目的は業績の向上と記載しましたが、計画通りに事が運ぶとは限りません。新店の運転資金を考慮すると、可能な限り「閉店」と「開店」にかかる費用を抑えておきたいものです。早い段階でどのような費用が発生するのかを把握し移転の計画を立てて行きましょう。まずは「閉店」と「開店」の費用をそれぞれ確認していきます。
(1)閉店に必要な費用
①原状回復工事費
店舗やオフィスなどを借りた場合、貸主側に入居時の状態で引き渡すことが義務となっています。工事の範囲は原則100%となっており、取り付け設置した内装材や造作物、照明や空調機などの設備を撤去・処分するための費用です。また、建物の床、壁、天井を破損・汚損させた場合(特別消耗)も原状回復工事の対象となります。相場については、坪5~20万円が一般的とされていますが、造作・設備のボリュームによってかなり変動します。閉店に必要な費用の中でも金額が大きい傾向にあります。
原状回復工事の詳細については、『原状回復工事って何?』もご参照ください。
②解約予告から解約日までの賃料
解約予告とは、賃貸借契約で定められた期間までに解約の意思を貸主や管理会社に通知することです。店舗の場合、一般的に解約日の3ヶ月~6か月前に通知が必要です。通知後、即日営業を終了したとしても解約日までの賃料が発生します。
③従業員の賃金
移転に伴いやむを得ず従業員を解雇する場合、30日前までに解雇の予告が必要です。予告の日数が30日に満たない場合や予告なしに解雇する場合、解雇予告手当の支払いが発生します。また、30日前に予告をしていたとしても、従業員が解雇日まで労働した分の賃金は支払う必要があります。
(2)開店に必要な費用
①物件取得費
移転先の物件を取得する費用ですが、一般的に保証金(敷金)、礼金、仲介手数料、前賃料が発生します。店舗の場合、保証金(敷金)の相場は賃料の3ヶ月~10ヶ月と言われています。また、居抜き物件を取得する場合は造作譲渡料が発生することもあります。居抜き物件と関連費用に関しては後述します。
②内装工事・設備費
店舗の内装や外装工事、空調や照明などの設備工事にかかる費用です。業種・業態、広さ、設備のボリューム、移転先により相場はかなり変動します。内装工事のみであれば、坪30~50万が一般的とされていますが、設備が加わると坪~100万まで跳ね上がります。早い段階で業者との打合せ、概算見積の依頼をしておくと、おおよその予算感が掴めるのでその他の計画が立てやすくなります。開店に必要な費用の中でも金額が大きい傾向にあります。
③運転資金
移転後の経営が安定するまでの期間に必要な諸々の費用です。賃料や仕入れの費用、水道・光熱費、通信費、賃金、備品・消耗品、広告費等々、数か月分用意しておきましょう。一般的に3ヶ月~6か月分あるとよいとされています。
2.移転の工事費用を節約するには?
移転に伴う費用は「閉店費用」と「開店費用」の2種類あることがわかりました。全体額を算出する過程で、どのように費用を抑えるかも具体的に考えていくかと思います。金額の大きい工事金額を節約できればかなりプラスになりますが、ある程度の専門知識と時間を有します。次にご紹介する方法は、専門家と時間に余裕をもって協議すれば、移転費用の節約に貢献してくれるでしょう。
(1)原状回復工事
原状回復工事は「相場より安くする」ことより「無駄に多く払わない」ことがポイントです。安くしたいところですが、見積を項目ごとにチェックして価格交渉をする、なんてことは知識がないと難しいです。加えて貸主や管理会社に業者を指定されることが多く、金額の比較をしないまま高く感じる見積を受け入れてしまうこともあるほどです。
見積を受け取ったら先ずは付き合いのある又は新店工事の業者などの専門家にチェックを依頼しましょう。項目ごとに適正価格かどうか、違うならばその理由を明確にするのです。そうすれば少しでも交渉の余地が生まれます。但し、これはあくまで見積のチェックです。正式な見積やそのための調査、実際に工事を依頼したりする場合は、必ず貸主や管理会社に許可を取るようにしてください。
(2)什器転用
新店の什器を全て新品で揃えるとそれなりの費用がかかります。そこで効果的な手法が既存什器の転用です。既存店・新店共に用途が共通の什器且つ、テーブルや荷物台などの構造がシンプルな什器は転用に向いています。加えて表面の仕上げ材や部品を交換すれば、新品より安く新品に近い状態にすることも可能です。
この手法は新店で必要な什器を明確にしたうえで、転用した場合と新品を買った場合の金額を比較していきます。ですから、新店の内装デザインも並行して進めておく必要があります。まずは、既存店と新店の什器リストを作成し、施工や補修の専門家に見てもらいましょう。転用の可否、補修費や運送費等の見積をしてもらい、最終的な判断を下します。
リノベーションの詳細については『店舗のリノベーション費用削減~資材を再利用した3つの方法~』もご参照ください。
(3)居抜き物件
「居抜き物件」とは、前テナントが利用していた造作(床・壁・天井等の仕上げ)、設備等が残された物件のことです。売主と買主間での譲渡を「造作譲渡」と呼び、譲渡に際して発生する金額を「造作譲渡料」と呼びます。閉店時の「原状回復工事費」と開店時の「内装工事・設備費」を大幅に抑えることが可能で、近年一般的になってきた方法です。但し、それ相応にトラブルも多く、賃貸借契約の確認、貸主や管理会社の承諾は必須です。
閉店時に「居抜き物件」を検討する場合、譲渡先の募集や造作譲渡の査定をしなくてはなりません。譲渡先が見つからず原状回復工事が再浮上することもありますので、スケジュールと予算には余裕を持っておくことが大切です。
また、開店時に「居抜き物件」を検討する場合、物件探しや造作・設備等の状態確認をしなくてはなりません。契約後に不調・故障等が判明することもありますので、調査には状態を判断できる専門家を同行させましょう。
居抜き物件の詳細については、『居抜き物件を活かしてスピーディーで低コストな店づくり』もご参照ください。
3.移転先の注意点
開店時の内装工事・設備費に関して、移転先によっては工事前後に予期せぬ費用が発生することがあります。もしそうなれば、工事費用は金額が大きいため移転計画の大幅な修正が発生してしまうでしょう。せっかく節約した費用を無駄にしないために、物件選びの段階で頭の片隅に置いておいてもらいたい注意点をご紹介いたします。移転先の選択肢は非常に多いので、今回はざっくり「路面店・ビルイン」「商業施設(SC・百貨店)」「商業施設(地下街)」に分けています。
(1)路面店・ビルイン
路面店・ビルインとは通りに面して営業を行う店舗のことです。2・3Fだけ、地下のみの場合もあります。
移転先として路面店・ビルインを検討する際には、「用途変更が必要かどうか」と「建物の古さ」に注意しましょう。建築物の確認済証や検査済証等に定められた用途以外の使い方をする際、場合によっては「用途変更」という手続きをしなくてはなりません(例:物販店→飲食店等)。詳細は省きますが、手続きには専門的な知識・時間・専門家への依頼料・改修工事費用が必要です。加えて建物が古い場合、法改正によって現在の建築基準法に適合しない「既存不適各建築物」の可能性があります。通常は現行法を適用しないことになっていますが、用途変更時に現行法に適合させる改修工事が発生する場合があります。上記に該当すると時間も費用も増加しますので、契約前の物件探しでは注意して下さい。
(2)商業施設(SC・百貨店)
商業施設とは複数の店舗が入居している施設のことで、ショップインショップとも呼ばれています。SCや百貨店、後述する地下街など様々なタイプが存在します。
基本的にSC・百貨店はコンセプトに沿って、テナントリーシングやゾーニング、業種構成、業種配置などを行います。そのことから、店舗のデザインも路面店のような自由度はありません。看板や設備機器、デザインやレイアウトなど、施設コンセプトに合うように制約が設けられていることもあります。想定以上に内装工事・設備費がかかると考慮しておく必要があります。賃料含むその他費用の高さも相まって、全体的に出店のハードルは高めとなります。
(3)商業施設(地下街)
地下街とは道路や建物の地下に設けられた商店街のことです。地下鉄や地下道に面している場合、SC・百貨店と同じく集客力に優れます。
煙がとどまりやすく避難・救助・消火活動がしにくいという地下の特性上、消防法で厳しく規制されています。そのため、不燃材料の使用箇所が増え内装・造作費がかさむ傾向にあります。また、路面店・地上の商業施設と比較して消防設備の増移設が発生しやすいです。これは、地下街は天井が低いために造作次第ですぐに散水障害になってしまうからです。移転計画の初期段階で内装工事費用、消防設備費用をそれぞれ高めに想定しておくとよいでしょう。
4.まとめ
店舗の移転は各所への手続きや物件探し、資金調達や移転案内のお知らせなど、限られた時間でこなすことが非常に多いです。本記事ではその中でも特に工事費用について説明してきました。節約方法という簡単な表現をしておりますが、実際は専門的な知識が必要です。スケジュール管理をしながら同時に専門外のタスクをこなすと、却って時間もお金もかかってしまうことがあります。ですから、外注含め費用をかける部分、かけない部分の線引きが大切です。弊社では、移転にかかわる相談を無料で承っております。お困りの際はお気軽お問い合わせください。
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