知って得する!照明で魅せる店舗デザインの考え方をプロが徹底解説
皆さんは普段の生活でどの程度照明に拘っていますか?自宅の照明器具を選ぶときは家電量販店に専門のスタッフがいるので聞くことは容易ですが、スタッフの方に言われた照明器具を家で取り付けてみた時に、なんか暗いな?とか、明るすぎるな・・・といったことは経験ないでしょうか?家であれば再度照明器具を購入することは費用も労力も大して掛かりません。しかし店舗となるとそういった調整は電気工事を伴い、費用と労力だけではなく、時間までも多く掛かり、最悪の場合は修正できないため、1からやり直さないといけないという事態にまで発展しかねません。
そこで今回の記事では照明の基礎知識~店舗照明のコツを紹介しますので、店舗照明で失敗しないようになりましょう!
1.照明の基礎知識
皆さんに質問です。普段生活している中で光は見えていますか?そうなのです。光って目に見えないのです!でも、皆さんは明るい場所、暗い場所、見えやすいもの、見えにくいものは認識していますよね?でもどの位明るいとか暗いとか、見えやすい、見えにくいは説明が難しいと思います。
そこで、感覚ではなく明るさや照明からの光を数値で表すことで「暗い、明るい」、「見えやすい、見えにくい」を共通の認識とするための最低限の単位をご紹介します。ここで紹介している単位は店舗デザインを考える際に押さえておかなくてはならない照明の単位となりますので是非覚えてください!
光束(lm)
漢字からもわかるように光の量がどのくらいなのかを示します。単位としてはルーメン(lm)です。よくルーメン=光の明るさと捉えられますが、ルーメンは光の量の単位なので、数値が高い≠明るいということではありません。設計の方も時々勘違いをしており、設計の段階でルーメン値にて照明を決定することがありますが、イメージより明るい、暗いということが起きてしまうので要注意です。
照度(lx)
光束とは打って変わり、こちらは明るさを表します。単位としてはルクス(lx)となります。
人が作業する環境にどのくらいの明るさが必要なのかを示します。空間の全体的な明るさを判断にするためにもっとも基準とされる単位となります。
ルクスの基準は、JIS(日本工業規格)により設けられており、さまざまな場所に基準が適応されています。
工場であれば、精密機器を扱う作業場では1500~3000lx、梱包等の簡易作業を行う作業場であれば70~300lx程度という基準が設定されていますが、店舗において基準などはありません。但し、商業施設などに出店する場合は最低照度が設定されている場合があるので注意しましょう。
ちなみに雲一つない満月の夜は0.3~5lx程度と言われています。皆さんどう思いますか?思ったより低い数値でしたか?高い数値でしたか?
演色性(Ra)
自然光に対し、どの色がどの程度再現されているかを示しています。単位はRa(アールエー)となります。数値の決まり方は基準となる色が数種類あり、それぞれの色の再現性の平均によって決まります。自然光を100としたときに、計測している光源がどの程度それぞれの色を再現しているかを各メーカーで確認しています。Raが100に近ければ近いほど自然光で見たときの見え方や色に近づきます。ちなみに、メーカーによって多少の違いはありますが、一般的なled照明はRa70~85となり、高演色器具になるとRa90~98となっています。演色性に拘った照明計画をすることで店内の装飾をきれいに見せることが出来、飲食店であれば提供するフードをよりおいしそうに、物販店であれば商品をきれいに、色鮮やかに見せる事が可能となります。ちなみに白熱球はフィラメントを燃やして発光させているのでRaは100となります。蛍光灯では、3波長域発光形蛍光灯と言われる光の三原色の波長を強くした蛍光灯があります。
色温度(K)
光源から発せられる光の色を数値で表したものです。単位はK(ケルビン)となります。K(ケルビン)は高ければ高いほど白っぽい光になり、低いほどオレンジ色となります。色温度には目安があり、使用する環境によって決まってきます。例えばオフィスや学校、図書館等、活発に活動を行いたい場所や、集中して作業を行いたい場所では高い色温度(白っぽい光)を使用します。飲食店やホテル等くつろぎたい空間の場合は低い色温度を使用します。
2.業種別照明テクニック
街には多種多様な業種業態の店舗が並んでいますが、たまに店内の雰囲気をおかしく感じたことはありませんか?その違和感はもしかすると照明のせいかもしれません・・・
この項目ではせっかく拘って作り上げた内装を照明でぶち壊しにしないよう最低限押さえておくべきポイントを2つの業種で紹介します。
飲食店
一言で飲食店といってもラーメン屋さんとバーなどのラウンジでは雰囲気も用途も違うのですが、最低限守ったほうが良いポイントがあります。飲食店で重要なポイントは4点です。
①店舗入り口は明るくなるように意識をする
②キッチンは店内より明るくなるようにする
③店内はどんなに高い色温度でも3500Kまで
④壁掛けメニューなどは必ず照明を当てこむ
これら4点は必ず意識しましょう。
特に【③店内はどんなに高い色温度でも3500Kまで】これは顧客回転数を強烈に意識したチェーン飲食店以外は要注意となります。たまにあるのが電球切れで、たまたまあった高色温度(4000~5000K)の電球を店内に点けているお店があります。その場しのぎの一時的な対処であればいいのですが、そのままにしているお店があります。どんなに拘った内装でも照明を適当にしてしまうと店内の雰囲気を壊してしまいます・・・
物販店(アパレルなど)
物販店においても守っていないと雰囲気が壊れてしまうポイントがあります。物販店で重要なポイントは3点です。
①店舗入り口は明るくなるように意識をする
②店舗の一番奥にある壁を明るくする
③基本照明は明るめに設計、商品にはさらに追加で照明を当てるようにする
これら3点は必ず意識しましょう。
特に【②店舗の一番奥にある壁を明るくする】は心理効果も相まってやるとやらないとでは大きな違いが出てきます。
その心理効果とは「サバンナ効果」と呼ばれています。サバンナ効果とは入り口付近よりも空間の奥の方の照明を明るくすることで、人が安心感を抱いて奥に進むという心理的効果です。つまり、店内の奥の壁を明るくするだけで、店内に人が入りやすい店舗になるということです!逆に暗いと入りにくい店舗になるということです・・・
3.照明の種類
ここ迄照明の基礎知識と押さえておくべきポイントを紹介してきました。これらと合わせて照明には大きく3つのジャンルがあります。3つのジャンルを正しく使い分け、ただ内装だけで空間を演出するのではなく、照明で演出することで内装の演出効果を何倍にも増幅させることが出来ることができます!
直接照明
漢字の通り光源を含む器具が直接見える照明器具を指しています。
直接照明と呼ばれるものには
・ベースライト
・ダウンライト
・スポットライト
等があります。
【ベースライト】の特徴は空間を満遍なく明るくする用途で主に使用され、正方形の器具や、長方形の器具があります。よく使われるのは事務所やバックヤード、工場などのあまり明暗が出てほしくない空間で使用され、照明にあまり予算を掛けることが出来ない、かけたくない箇所にも使用されます。しかし、照明器具自体が大きいので天井での存在感は大きく、おしゃれな空間に使用することは非常に難しい器具となります。
【ダウンライト】の特徴は天井面に埋めこむ照明器具で、天井に照明器具の存在感をあまり感じさせることのない照明器具です。ダウンライトには種類があり、【ベースダウンライト】【ユニバーサルダウンライト】です。【ベースダウンライト】は【ベースライト】同様空間に明暗を付けないように明るくするダウンライトです。【ユニバーサルダウンライト】は照らす方向を変更させることが出来る器具となります。しかしながら、一台一台の明るさはそこまで強くないため、照明器具の台数が多くなる=費用が高くなります。また、天井の高さやディスプレイ内容によって使用する器具を細かく選定する必要があり、照明設計に慣れたデザイナーの方でないと照明設計は難しいです。そうは言いつつもダウンライトは店舗照明で最も使用される照明器具となります。
【スポットライト】の特徴は天井面に取付けるタイプの器具ではなく、配線ダクトという専用の機材に取り付ける照明器具となります。【ベースライト】や【ダウンライト】は取付けるのに電気工事の免許を持っている業者での取付けが必須となるのですが、スポットライトは配線ダクトを電気工事で取付けると照明器具自体は免許を持っていない方でも取付けが出来ます。また、何度も取り付け、取り外しが出来るので、必要な箇所に必要な分だけ照明器具を持ってくるといったフレキシブルな対応が可能となります。しかし、取付ける度に照明の調整が必須となるので、取付けが完了した際は照明の調整が必要となる器具でもあります。
間接照明
光源が直接見えず、壁面や床面、段差などに仕込むことで陰影をはっきりとつけることで空間にメリハリを生み出します。また、高級感の演出や壁面の明るさを演出する際にも使用され、注意して店内を見渡してみるとおしゃれな店内には間接照明が多用されているので探してみてください。思っている以上に間接照明を使用している店舗、空間は多いので驚かれるかと思います。普段は照明器具が見えないように取付けされているので直接見たことがある方は少ないかもしれません。しかしながら、間接照明は非常にシビアな照明効果であり、使用する器具と仕込むための施工を間違えてしまうと全く効果を発揮しないばかりか、空間に大きな違和感を出してしまう恐れもあります。間接照明は当社のように照明メーカーと直接やり取りが出来る業者に一度依頼をしてどのような雰囲気を演出したいか打合せを必ず行う様にして下さい。後から修正が効かない場合がほとんどですので計画段階から綿密な打ち合わせを行いましょう!
演出照明
直接照明と間接照明は空間を【明るく】するための照明器具でしたが、演出照明に関しては明るさもとりつつ、空間の演出に特化した照明器具となります。また、演出用器具なのでこの空間にはこの器具!といったルールは何もなく、店舗オーナーの感性で好きな設計をすることが可能です。
演出照明と呼ばれるものは
・スタンドライト
・ペンダントライト
・ブラケット
・シャンデリア
等があります。
【スタンドライト】の特徴は大型の器具が多く、目に付きやすいという性質を持っており、外観に拘ったおしゃれなモデルが多くあります。単体で空間を十分に演出することが出来るため、基本は単体使用となります。また、部屋や空間の中心に設置するというよりは端の方に設置することで何もない空間を演出することが得意な照明器具となります。
【ペンダントライト】の特徴は天井からワイヤーやパイプで吊るし、空中に照明器具を存在させ、アイキャッチを作る器具です。単体で空間を十分に演出する大型の器具から、各テーブルの上に計画する、複数台をあえてランダムに取付け空間を演出する小型の器具があります。演出したい空間によって使い分けることで内装演出をより引き立てることが可能です。
【ブラケット】の特徴は壁面に取り付ける照明器具で、シンプルな壁面にアクセントをつけるための照明器具です。壁面にディスプレイすることが難しい場合や、スタンドライトやペンダントライトを設置するほど空間、部屋が大きくない場合に使用すると効果的です。器具自体は小型のものが多く、通路で使用するのであれば一定間隔で設置、部屋で使用するのであれば入口から見た正面の壁面に設置することで効果的なアイキャッチ効果を演出することが出来ます。
【シャンデリア】の特徴は多くの電球を取付け、クリスタルやビーズなどの装飾を施し、煌びやかな空間を演出することが出来る照明器具となります。基本的に大型の照明器具となるため、大きな空間や部屋を演出することが得意な器具です。しかし、最近では小型の器具もありますのでそちらを店舗内や部屋で使用すればシンプルな内装で仕上げても空間に華があるような演出をすることも可能です。
4.購買意欲に影響するポイント
さて、ここまでお伝えした内容を基にお客様の購買意欲を刺激するポイントを照明効果に絞ってお伝えしていきます。ポイントは3点です。
①明るさ
②色温度
③適切な照明器具の選定
これら3点です。
①明るさに関して、物販店(アパレルなど)は約500~1200lx、カフェは約300~500lx、バーは約100~300lx、定食屋やラーメン店などは約500~1000lx、工場では作業内容によりますが、800~2500lxを目安に照明設計を行っていきましょう。あくまで目安なので、創りたい店舗や演出したい空間によって変動はあります。
②色温度に関して、物販店なら3500~4000K(温白色~白色)、カフェやバーでは2500~3000K(キャンドル色~電球色)、定食屋やラーメン店などでは3000~3500K(電球色~温白色)、事務所や工場など作業をする場所は4000~6500K(白色~昼白色)で色温度を設定していきましょう。
③適切な照明器具の選定は空間にあった照明器具を選定することを指します。器具によっては魅力的なほどに安価な器具が存在します。しかしながら、価格のみで照明器具を選定してしまうと照明器具が要らない存在感を出してしまう場合や、明るさが欲しい場所に適切な明るさを確保できないといった事態が引き起こされます。それぞれの照明器具にはしっかりと使用意図があり器具設計されています。価格も大切ではありますが、拘った店舗、空間であれば是非照明器具にも拘って下さい。またそれぞれ業態によって拘る要素は異なると思います。飲食業であれば提供した料理をよりおいしそうに見せる、物販店であれば商品を目立たせる、サービス店であればお客様に気持ちよくサービスを受けて戴くなど、これらを満たすそれぞれの業態店舗又は空間で適切な演出が出来る照明器具を選びましょう。
5.照明の上級テクニック、調光について
最後に照明設計において扱いが非常に難しいテクニック【調光】についてお伝えします。皆さんは家にある照明に調光機能は付いていますか?ついている方は活用されていますか?メーカーに確認したところ、調光機能のついた照明器具を使用されていても約半数は最初に少しいじってそのあとは滅多にon/off以外の操作をしないとの回答を戴きました。驚くことに店舗でも同様の事が起きており、基本的に調光機能のない器具で設計することが多いのですが、拘った店舗を作っていらっしゃるオーナー様は調光機能が付いた照明器具を設置されます。しかし、最初に設定するのを最後に、その後調光を弄ることが無いとのことです。ではどのように調光機能を生かせばいいか、それは【時間や曜日などで変化をつける】ために調光機能を活用しましょう!狙いは【店舗に飽きさせない】です!内装を変えるとなると大掛かりな工事や準備が必要です。しかし、調光機能を上手く使用すれば内装を変えることなく、店舗や空間の雰囲気を大きく変えることが可能です。たしかに、調光機能を付けた照明器具は調光機能のない器具に比べると多少高くなります。しかし、調光機能を使いこなすことで同じ店舗でも様々な空間を演出することが出来るので、結果費用を抑えることが出来る場合が多々あります。そういった面も含め、設計から考えていくと店舗に投資をする効果が大きくなるのではないでしょうか?
6.まとめ
如何でしたでしょうか?照明の基礎知識~照明のコツまでをご紹介いたしました。内装材はサンプルや実際に手に触れることが出来、分かりやすく提案できます。しかし照明は器具には触れますが、光を実際に見ることは店舗や空間が完成してからでないと確認することが困難です。見えないからこそ、拘りを見せることで店舗や空間において他店舗との差別化につながるのではないでしょうか?今回記載した内容は多種多様な実績を誇る当社のノウハウの一端にすぎません。店舗を展開したい、これから展開する店舗は今までより拘りたいと思われた際は是非当社にお声がけください。
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