小料理屋の内装が印象を決める。心をほどく空間デザインのポイントとは?

会社帰りにちょっと1杯、ひとりでふらっと寄れるお店。それが小料理屋です。
ファストフードのようなせわしなさも、高級料亭のような緊張感もない、穏やかな時間を過ごしたい方が訪れます。
常連が付く小料理屋を営むには、居心地のいい空間づくりが欠かせません。
この記事では、小料理屋の内装づくりに欠かせない居心地の良さを、コンセプト設計から空間演出、和モダンのデザインポイントまで丁寧に紹介。
開業や店舗づくりに役立つ実例と施工のコツも、わかりやすく解説します。
目次 [目次を表示する ▼]
小料理屋とは?定義とコンセプト

小料理屋の定義
「小料理屋」と聞くと敷居の高い「割烹」のような店を想像しがちですが、小料理屋は割烹よりもずっとカジュアルで、家庭的な料理を気軽に楽しめるお店を指します。
季節の味に舌鼓を打ちながら「いつもの1杯」を気兼ねなく楽しめる、第2の家のような存在と言えるでしょう。
小料理屋の一般的なコンセプト
小料理屋の軸は「家庭的な温かさ」です。
煮物やおひたしなど、どこか懐かしい和の家庭料理中心のメニューで、日本人のノスタルジーに訴えかけます。
背伸びしない「いつもの感じ」を大切にしながら、ほんの少し丁寧な空気感を添える。日常と非日常の中間が、小料理屋ならではの魅力です。
小料理屋と割烹の違いや、開業時のポイントについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
第一印象を決める小料理屋の内装づくり

店を訪れた瞬間に「ここ、いいな」と感じてもらえるかどうか。その第一印象が店の魅力を左右します。
料理の味はもちろん大切ですが、その味を引き立て、記憶に残る体験へと変えるのが「内装」です。
料理と空間、その一体感を演出する内装デザインの重要性と、ポイントを解説していきます。
小料理屋は印象が大切
小料理屋には肩ひじ張らない、家庭的な温かみが求められます。
初めて来たお客様に緊張感を与えてしまうと、どんなに料理がおいしくても2度目の来店はありません。
チェーン店とはまた違う「気楽さ」を感じてもらうことでリピーターを獲得していきましょう。
内装デザインは雰囲気を生み出す舞台装置なのです。
内装がお店のイメージを形成する
極端な例ですが、ごはんとお味噌汁を出すお店なのに、内装がクラシカルなヨーロピアンスタイルでは、誰でもバランスが悪いと感じるでしょう。
「いいお店だったな」と思ってもらえる小料理屋には、料理と空間のバランスがあります。
定番の家庭料理を出すお店なら家を連想させるスタイルにし、創作料理を出すお店ならモダンでおしゃれなスタイルにすることでバランスをとることが可能です。
そうして料理と空間に一体感を持たせることで、「この店は普段使いしやすい家庭的な店」「この店はデートに使えるおしゃれな店」といったイメージ作りができるのです。
照明で雰囲気づくり
照明は、料理の見え方や空気感を決める大事な要素です。
明るすぎると居酒屋のような印象になり、暗すぎると緊張感が出てしまいます。
理想は、色温度の低い、やや暖かみのあるオレンジ系の光です。
料理がおいしく見えるだけでなく、全体的な印象を優しく、柔らかいものにしてくれます。
また、間接照明でじんわり照らすと少し雰囲気のあるお店となります。
居心地のいい椅子
雰囲気のいい店には居心地のいい椅子が欠かせません。
1時間も座っていられない椅子は、小料理屋には向いていないと言えるでしょう。
カウンターやテーブルの高さとの兼ね合いも考えなくてはいけません。膝を軽く曲げただけでぶつかる椅子では居心地悪く感じます。
妥協せずぴったり合う物を探すか、思い切ってオーダーメイドをしてもいいかもしれません。
動線を意識したレイアウト
小規模店舗では、限られた空間をいかに効率的に使えるかがポイントです。
お客様とスタッフの動線はできるだけ分け、誰もが快適に移動できるようにしましょう。
動線がスムーズなお店はスタッフの所作に無理や無駄がなく、お客様にも心地よさが伝わります。
雰囲気の作り方についてもっと知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
和モダンで演出する内装デザイン

ほとんどの小料理屋では和食をメインに提供しています。
そのため和風のデザインにしたいところですが、純和風にしてしまうと格式高さが出てしまい、小料理屋に求める家庭的な雰囲気には合いません。
そこでおすすめなのが「和モダン」スタイルです。和モダンを取り入れた、内装デザインのポイントをご紹介します。
和モダンとは?
「和モダン」とは、日本の伝統と現代のデザインをうまく組み合わせたスタイルのことです。
畳や木、和紙といった昔ながらの素材を使用しつつ、シンプルでスタイリッシュな要素を加えることで、おしゃれだけど懐かしい、そんな空間が作れます。
和を感じる素材選び
和の雰囲気を取り入れるには、素材選びが重要です。
木材を基本に、竹や和紙、土壁といった自然素材は、見た目の美しさだけでなく、手触りや香りでも和の空間を演出してくれます。
特に木材は、年を重ねるごとに色味が深まり、味わいが増していく素材です。経年変化が「店の歴史」に変わっていきます。
和モダンを演出する配色
和モダンの空間づくりで大切なのはナチュラルで落ち着いた配色です。
壁や床、天井は生成りやベージュなどの柔らかく明るい色を基調とし、木材の色が入ることを念頭において、締め色に黒や藍色を入れることでぼやけた印象になりません。
地味に見えるかもしれませんが、小料理屋のメインは食事です。料理や食器の色が足されることを加味して、色数を減らしたシンプルな配色が望ましいでしょう。
日本伝統の家具・雑貨
信楽焼の花器、麻ののれんなど、日本らしいインテリアを1つ加えるだけで空気ががらりと変わります。
また、多くの小料理屋では旬の食材を使ったメニューを提供しています。
季節感のある小物を置くことで、料理と空間にさらなる一体感が生まれるのです。
和モダンという新スタイルに、ほんの少し伝統の香りを混ぜる。この「さりげなさ」がセンスの良い小料理屋づくりのコツです。
和モダンについてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
こだわり光る!小料理屋のカウンター席

小料理屋は小さなお店が多く、カウンターが空間の中心となります。
お客様との距離が近く、料理の向こう側に人柄まで見えるのは、小料理屋ならではの魅力です。
お店の魅力を最大限引き出すためにも、カウンター席にはとことんこだわっていきましょう。
素材
小料理屋では木のカウンターが人気です。
1枚板や無垢材にこだわるのもいいですが、費用がかかる点に注意です。
以前は毛嫌いされがちだった集成材も、個性的な見た目がおしゃれかつ安価で使いやすいと、人気が出つつあります。
形状
【I字カウンター】
まっすぐなI字カウンターはすっきりと見えるだけでなく、他の形状に比べてスペースを取りません。
ただし、スタッフと視線が合いやすく、プレッシャーを感じさせてしまうことがあります。
【L字カウンター、コの字カウンター】
L字カウンターやコの字カウンターは圧迫感を減らすだけでなく、お客様同士での会話が生まれやすくなります。
その代わり、ある程度のスペースが必要です。
高さ
【ローカウンター】
小料理屋のカウンターの高さは70cm程度のローカウンターがいいとされています。
これはダイニングテーブルと同じ高さで、ゆっくり食事するのに適しています。
【ミドルカウンター】
85cm~95cmのミドルカウンターであれば店員と会話がしやすくなり、親しみやすい雰囲気が出ます。
ただし、床に足が付かず安定感が出ないので、足置きを設置するなどの工夫が必要です。
奥行
小鉢とお酒程度なら30cmもあれば十分だと言われていますが、メニューなどを置くことを想定すると、最低でも45cmはほしいところです。
おぼんに乗せた一膳料理を出すなら、50cm~60cmあるといいでしょう。
お皿を置いても余裕があり、配膳しやすく、なおかつお客さんとの距離も近すぎない、ちょうどいい奥行きが、双方の安心感につながります。
付け台
付け台とは、カウンターと厨房との間にある料理を出すための台を指します。
小料理屋ではそこに、大皿に盛ったおばんざいを並べることがあります。
料理を受け渡すだけでなく、陳列台の役割も果たしているのです。
衛生面を考えるなら、お客様の頭の高さよりやや高い位置になるように設置するか、ラップをかけたり、アクリルケースで覆ったりするといいでしょう。
カウンターについてもっと知りたい方はこちらの記事をご覧ください
まとめ
小料理屋の内装は、単なる見た目ではなく雰囲気づくりの一環です。
料理の香りや音、店主の所作、そして光の加減まで、すべてが一体となって「心地よさ」を生み出します。
料理だけでなく、空間までも味わってもらうことでお客様の印象に残る、良い店を作ることができるのです。
「もっと雰囲気のいいお店にしたい」「常連の集まる居心地のいい空間にしたい」そんな理想の小料理屋にするための第一歩を、内装から始めてみませんか?
◆◇◆
大昌工芸株式会社では各種デザイン・設計のご相談から、実際の内装工事まで手厚くサポートを実施しております。お困りの際はお気軽にお問い合わせください。
また、関連記事やその他の役立ち情報、実績・事例もございますので、メニューの「施工実績」や「ノウハウ」をぜひご一読ください。

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